丸山 紗季 マルヤマ サキ

Saki Maruyama

家政学部 管理栄養士養成課程

ポストドクター

専門分野

衛生学

研究テーマ

食品および食品成分摂取による高血圧予防

研究キーワード

高血圧/海藻/アルギン酸/ラミナラン/食酢/昆布出汁/鰹出汁/腸管粘膜バリア/消化管ホルモン

研究の概要

世界には高血圧症の人が約12.8億人存在し、その半数以上が未治療であると推定されています。高血圧の発症や進展には遺伝的要因もさることながら生活習慣が大きく関わることから、高血圧発症予防のためには日々の食事への介入が極めて重要であると考えられています。そこで、私はアジア圏で習慣的に摂取されている海藻の機能性に注目して研究をしています。
私たちは、腎血管性高血圧モデルラットに昆布を摂取させると、血圧上昇抑制効果を示すことを明らかにしました。従来から海藻の血圧上昇抑制効果の作用機序に、海藻特有の食物繊維であるアルギン酸による糞便へのナトリウム排泄促進が関与していると考えられてきました。そのことから、腎血管性高血圧モデルラットにおける昆布の血圧上昇抑制効果にも、アルギン酸が関与していると考えました。そこで、私は同じモデルラットに、昆布の他に、アルギン酸を含み且つその量が異なるワカメやメカブ、アルギン酸が昆布の20%である昆布出汁を与え、血圧への影響を観察しました。すると、ワカメやメカブはアルギン酸を含むにも関わらず、血圧上昇抑制効果を示さず、一方で、アルギン酸量が少ない昆布出汁においては昆布と同レベルの血圧上昇抑制効果を示し、アルギン酸の量に依らず、昆布や昆布からとった出汁は血圧上昇抑制効果を示すことが明らかになりました。また、アルギン酸の金属イオンの結合能が平均分子量や粘度に依存することから、平均分子量や粘度で補正したアルギン酸においても血圧上昇抑制作用の強さとの関連を評価しましたが、有意な関連は認められませんでした。同モデルラットに高塩分餌に昆布を添加した餌を摂取させると、昆布を添加しない対照の高塩分餌を摂取する場合よりも、糞便中にナトリウムを多く排泄するものの、ほとんどが尿中にナトリウムが排泄され、糞便に排泄されたナトリウム量は尿中に排泄されたナトリウム量と比較して、約60分の1であったことから、昆布摂取による糞便を介したナトリウム排泄の寄与は、全身へのナトリウム吸収を抑制する上で、非常に限定的であることが示されました。以上のことから、従来から言われていたアルギン酸による糞便へのナトリウム排泄は、昆布摂取による血圧上昇抑制効果の主要な作用機序ではない可能性を見出しました。
私たちは海藻を素干しのまま食することは少なく、そのほとんどが水に浸漬したり、湯通しや出汁をとったり、食酢との組み合わせ(酢の物、とろろ昆布、おぼろ昆布等)により摂取をすることから、私は海藻の加工及び調理形態の違いによる血圧に対する影響を検討しています。数種の海藻やその加工及び調理形態の差異による血圧上昇抑制効果の有無やその程度の違いが認められる理由は未だ明確にはなっていません。私は、その理由を明らかにすべく、海藻に含まれる食物繊維による腸内環境への影響、特に腸管粘膜バリア機能や消化管ホルモンへの役割の観点から研究に取り組んでいます。管理栄養士として、海藻の種類の違いによる血圧に対する影響の詳細を明らかにし、最終的に海藻に含まれる食物繊維が体内で効果的に作用を発揮できるような調理法の開発や食品との組み合わせの提案を目標としています。

著書・論文等

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